もじけ が生まれた夜のお話

2012年 1月8日(晴れ)

東京で美大生だった頃の 私の安アパートは
「直亭」などと呼ばれ、いつも誰かが ご飯を食べに来ていた。

お腹を空かせた学生達にとって 味など どうでもよかったのだろう
安酒を飲んで 語り明かし
朝が来たら 台所でもなんでも雑魚寝する。
男も女もない、山登り部の世界。


その夜は、3期下の写真学科の後輩が ふらっとやって来て
二人でカレーライスを食べていた。
私は、夏に故郷 田辺市で行った初個展の記録を
何気なく見せた。
市内100カ所ほどに自転車でポスターを貼り回り800人以上を動員した
若さゆえの初個展の全てが、田辺の人々の写真とともに綴じらた
上下2巻の部厚い記録本だ。
後輩は それを食い入るように見つめた。

これが「もじけ」誕生と夜となる。
意気投合した私たちは、次の夏、田辺の町で 何かやろうと
誓い合った。

夏、後輩が声を掛けて集まった5人が 18切符の長旅の末
深夜1時の紀伊田辺駅に降り立った。
迎えに行った私は 後輩以外 ほぼ初対面。

6人の 熱い夏は こうして始まった。

この夏、一体なにが起ころうとしているのか

この時は まだ だれも知らない。

(つづく)





日々絵「モクレンの蕾と 星空」



春は きっと来る